公共下水道を利用する工場及び事業場の排水規制について
公共下水道を利用するためには、排水設備の設置等のほかにも、守らなければならない決まりがあります。
工場、事業場の排水は種々雑多な成分を含みます。法令等に定められている基準以上の悪質下水を公共下水道に流すと、有害ガスや悪臭の発生、公共下水道施設の損傷、処理場の浄化能力の低下により、河川等の公共用水域の環境を汚染することとなります。
そのため悪質下水を公共下水道に流すおそれのある工場・事業場は、法令等にしたがって施設を適正に管理し、排水基準以下の水質にするよう義務付けられています。
用語の説明
- 排水基準
『排水基準』とは、公共下水道施設の機能を妨げ、又は施設を損傷するおそれのある下水を流さないように設けている、下水の水質基準をいいます。 - 特定施設
『特定施設』とは、人の健康及び生活環境に被害が生ずる恐れのある物質を含む汚水を排出する施設として、法令により指定されています。下水道法第11条の2第2項で定める特定施設と、ダイオキシン類対策特別措置法に規定する水質基準対象施設があります。 - 特定事業場
『特定事業場』とは、特定施設を設置している工場や事業場をいいます。 - 特定事業場以外
『特定事業場以外』とは、特定施設を設置していない工場や事業場をいいます。 - 除害施設
『除害施設』とは、工場や事業場に設ける、下水道に有害な下水を排水基準に適合するように処理するための施設をいいます。 - 阻集器
『阻集器』とは、下水に含まれる、有害危険な物質又は再利用できる物質の流下を阻止、分離、捕集し、自然流下により排水できる形状、構造をもった器具又は装置をいいます。また、排水設備の機能の妨げ、又は損傷の防止をします。
水質について
この『排水基準』には、下水処理場で処理できない、健康に有害な物質や下水管に悪影響を及ぼす物質等が指定されています。
その基準値は、『特定事業場』か、『特定事業場以外』か、日平均あたりの排水量はどの位か、排水の水質は何か、などにより異なります。詳しくは排水基準一覧表をご覧ください。
『特定事業場』とは『特定施設』を設置している工場・事業場のことで、人の健康や生活環境や、下水道施設の機能に悪影響を与える物質を排出するおそれのある施設です。
『除害施設』とは、下水道管や処理場に悪影響を与える物質を除去するために必要な施設で、排水を『排水基準』以下にする施設をいいます。
<『除害施設』の例>
・重金属を薬液により沈殿させ除去する凝集、沈殿施設
・水素イオン濃度の調整を行う中和処理施設
・有機物を微生物の働きにより減らす生物処理施設 などがあります。
排水の量に係わらず、泥砂やガソリン、オイル類を排出する工場・事業場、油脂類を排出する飲食店などは阻集器(グリーストラップなど)の設置が必要となります。
下水管の悪臭や爆発事故、閉塞を未然に防止、また資源を回収し再利用を目的としています。
『阻集器』とは、自然流下により排水できる形状、構造をもった器具又は装置をいいます。(除害施設とは異なります。)
『阻集器』について詳しくはこちらをご覧ください。
公共下水道への排水基準一覧表
【公共下水道への排水基準一覧表の見方】
- 排水基準は、『特定事業場』(特定施設を設置している工場・事業場)か、『特定事業場以外』(その他の工場・事業場)か、また事業場全体の排水量が日平均あたり10、30、50立方メートル以上か未満かによって、異なりますので該当欄をご覧ください。
- 表に記載している数値は許容限度(下水道に流すことのできる限界値)で、生物化学的酸素要求量、浮遊物質量、窒素含有量、燐含有量、水素イオン濃度、ノルマルヘキサン抽出物質含有量、温度、沃素消費量については記載された範囲内で下水道に流すこととなっています。
- 特定施設の設置者は、排水基準を超える排水を流すおそれがある場合には、水質の改善(改善命令)や、公共下水道への排水の一時停止を命じられる場合があります。また、基準を超えた場合には、罰則が適用されます。
- 特定施設の設置者以外で、排水が排水基準に適合しない場合は、除害施設の設置など、基準を守るために必要な措置を行わなければなりません。基準を超えた場合には、水質改善などの措置を命じられます。その措置命令に従わない場合には、罰則が適用されます。
- ダイオキシンの規制について、ダイオキシン類の量はその毒性に応じて、2、3、7、8、-四塩化ジベンゾーパラージオキシンの量に換算した数値(TEQ:毒性等価換算濃度)で表します。
<ダイオキシン類とは>
ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(DL-PCB)の総称。
水質の管理
- 水質測定の義務
特定施設を設置している工場・事業場には、法令により下水の水質を測定し、記録する義務があります。
また、特定施設以外でも除害施設を設置している場合には、下水の水質を測定し、その結果を記録しておくよう努めることとしています。 - 水質測定結果等の報告
下水道施設の保全のため、水質測定や除害施設の維持管理状況を報告していただく場合があります。 - 除害施設の維持管理
設置した施設も維持管理が悪いと基準を守れません。日常の維持管理が大切です。 - 立入検査
必要に応じて、工場・事業場への立入検査を行い、排水の水質測定などを行います。 - 事故時の対応
事故等により有害物質等が下水道に排出された場合には、消防署などとともに速やかに、維持管理課(電話049-283-1101)まで、ご連絡ください。事故時の対応について詳しくはこちらをご覧ください。
水質測定と記録の方法
下水道を継続して使用する特定施設の設置者は、下水の水質を測定し、その結果を記録しておかなければなりません。その具体的な方法については、法令で下記のとおり定められています。
測定方法
下水の水質の検定方法等に関する省令に規定する検定方法によること。
※自社において測定が困難な場合は、水質分析機関にお問い合わせください。
採水時刻
水質が最も悪いと推定される時刻
※操業状態や処理の状態等を考慮してください。
採水場所
下水道への排出口ごとに、下水道に流入する直前で、他の排水による影響の及ばない場所で、水深の中層部で採水すること。
※できるだけ、し尿や生活排水の影響の少ない場所を選んでください。
測定回数
・温度又は水素イオン濃度の測定は排水の期間中1日1回以上
・生物化学的酸素要求量の測定は14日を超えない排水の期間ごとに1回以上
・ダイオキシン類の測定は1年を超えない排水の期間ごとに1回以上
・その他の測定項目の測定は7日を超えない排水の期間ごとに1回以上
記録の方法
・水質測定記録表(下水道法施行規則様式)に記録し、その記録を5年間保存すること
・水質測定結果等の報告
坂戸、鶴ヶ島下水道組合では、公共下水道の適正な管理のため、必要に応じて水質測定結果や除害施設の維持管理状況の報告を求める場合があります。また、排水基準を超えた場合には、ただちに原因を究明し、適切な処置をとっていただくとともに、坂戸、鶴ヶ島下水道組合維持管理課へご連絡ください。
除害施設の維持管理
除害施設(水処理施設等)を設置しても、その機能が十分に発揮されなければ、処理は不完全なものとなり排水基準も守れなくなってしまいます。日常の点検や整備をとおして、適切な処理が行われるよう心掛けてください。
維持管理の注意事項
水質管理責任者を定めて管理責任体制を明確にしてください
水質管理責任者とは・・・
事業場等から排水される下水を法令で定める排水基準に適合させる役割を担う責任者です。
《水質管理責任者の業務》
・汚水の発生施設の使用の方法並びに汚水の発生量及び水質の適正な管理に関すること。
・除害施設の維持管理及びこれらの施設の運転日報の作成並びに必要な措置に関すること。
・公共下水道に流す下水の量、水質の測定及び記録に関すること。
・除害施設から発生する汚泥の処理及び処分に関すること。
・施設の事故及び緊急時の措置に関すること。
運転日報・月報を作成してください(記載する内容は次のとおり)
・処理水量
・原水・処理水の水質
・処理に使用した薬品の使用量、在庫量、発注量
・装置の稼働状況、清掃、注油、部品の交換等
・発生した汚泥の量、処分の方法
・その他必要な事項
処理水質や装置に異常があったときは、すみやかに原因を究明し、必要な対応策をとってください。
阻集器の管理
工場・事業場等が浮遊物質または油脂類を含む汚水を継続して下水道に流す場合には、これらの物質の流出を防ぐため、有効な阻集器の設置が必要となります。
工場・事業場の範囲 | 流出防止物質 | 阻集器の種類 |
---|---|---|
泥、砂、セメント顆を排出する工場・事業場等 | 土砂、石くず、その他これに類する固形物質 | サンド阻集器 |
ガソリン、オイル類を排出する自動車洗車場、車庫、ガソリンスタンド等 | 可燃性油脂類 | オイル阻集器 |
油脂類を排出する料理店、ホテル、食品加工工場等 | 動植物油脂類 | グリース阻集器 |
理美容店、動物関連事業場等 | 頭髪類 | ヘアー阻集器 |
クリーニング工場、リネンサプライ工場等 | 繊維くず類 | ランドリー阻集器 |
歯科医院、美術教室、陶芸室 | 鉱物粉末、石膏、漆喰類 | プラスタ阻集器 |
グリーストラップ(グリース阻集器)の清掃
阻集器は定期的に清掃を行う必要があります。清掃を怠ると、阻集器から固形物等が流出し、下水管の詰りの原因となることがあります。油脂分の多い飲食店などは、グリーストラップ(油水分離槽)の適切な管理をお願いします。
<グリーストラップの清掃例>
・バスケット、スクリーン等の清掃は毎日1回。
・油の清掃は1週間に1回、ただし油の量が多い場合には毎日。
・浮いている油は、ひしゃくですくい、缶などに保管してください。保管した油は産業廃棄物処理業者に処分を依頼してください。
・ごみ、食べかすの清掃は1か月に1回。
・トラップ内部の清掃は、3から4か月に1回。
・定期的に槽内部の全量引き出しと施設の洗浄、破損状況等の点検を行ってください。
・施設周辺では油分によるスリップ事故に注意しましょう。
・特に油分の多い排水は、ポリバケツ等に入れて冷却し、固形油脂分を回収した後に流してください。
注意
・清掃周期は、一般的な目安です。必要に応じて清掃頻度を増やしてください。
・事業活動に伴って発生した油脂や汚泥等は産業廃棄物となるため、廃棄物処分の専門業者に依頼して正しく処理してください。
※他の除害施設の維持管理については、当該除害施設メーカーの取説等をよく確認し適切な管理をお願いします。
立入検査
坂戸、鶴ヶ島下水道組合では、公共下水道の機能および構造を保全し、水処理センターの機能を適正に保つために、排水量の多い工場・事業場や有害物質を排出するおそれのある工場・事業場について、立入検査を行う場合があります。
その際、排水設備、特定施設、除害施設の稼働状況や下水の水質等の検査を実施し、必要に応じて施設の運転方法の変更や改善等を命じる場合があります。
工場排水の手引き
このページに書かれていることや、必要な書類や届け出等について、要点を手引書としてまとめています。
参考法令
水質測定の義務等
・下水道法第12条の12(施行規則第15条)、坂戸、鶴ヶ島下水道組合下水道条例第27条
・水質の測定結果の記録をしない者又はこれに関し、虚偽の記録をした者への罰則規定・・・下水道法第49条
報告の徴収
・下水道法第39条の2(施行令第25条)
・悪質下水の排除者又は特定施設の設置者に係る報告をしない者又はこれに関し虚偽の報告をした者への罰則規定・・・下水道法第49条
排水設備等の検査
・下水道法第13条
・検査を拒み、妨げ、または忌避した者に対する罰則規定・・・下水道法第49条
特定事業場からの下水の排除の制限
・下水道法第12条の2(施行令第9条の2から第9条の7)
・規定に違反した場合の罰則規定・・・下水道法第46条の2
除害施設の設置等
・下水道法第12条(施行令第9条)、坂戸、鶴ヶ島下水道組合下水道条例第26条(施行規則第12条)及び下水道法第12条の11(施行令第9条の10、第9条の11)、坂戸、鶴ヶ島下水道組合下水道条例第24条(施行規則第12条)
・規定に違反した場合の罰則規定・・・坂戸、鶴ヶ島下水道組合下水道条例第46条
阻集器の設置義務
・坂戸、鶴ヶ島下水道組合下水道条例施行規則第3条
特定事業場への改善命令等
・下水道法第37条の2
・命令に違反した場合の罰則規定・・・下水道法第46条
監督処分等
・下水道法第38条
・命令に違反した場合の罰則規定・・・下水道法第46条
このページに関するお問い合わせ先
維持管理課 TEL 049-283-1101